時は幕末。京の都では、尊王攘夷、倒幕を目指す人々の動きが活発となり、
そして文久三年、「新選組」が誕生。局長・近藤勇、芹沢、新見。
結束固きこの集団の中で、一番の剣の使い手こそ、沖田総司その人であった。
まことに明るく朗らかで。壬生の屯所の近所の子供たちとは鬼ごっこ。
「では、今度は私が鬼だ。さぁ、十数えるうちに逃げるんだぞ。よいか」
あるとき、新選組は、尊王攘夷派の企みを知る。彼らは、京の町に火を放ち、
また、近々、彼らが宿屋・池田屋に集まることを知る。総司は憤った。
「町じゅうに火をつけられたら、多くの人が家や身内を失うことになる。
斯くて、新選組は池田屋へ。その夜、六月五日は祇園祭の宵山で。
胴衣に鉢金(はちがね)、浅葱(あさぎ)の羽織に山道ダンダラ白き木綿の袖印。
然るに、この池田屋事件をきっかけとして、新選組の名は世に轟き、
折しも出会った医者の娘に、恋をした。けれど、なんで言えようこの思い
生涯たった一度だけ、胸にともした恋の灯を、総司は自ら吹き消した。
慶応三年、将軍・徳川慶喜は朝廷に大政を奉還し、王政復古の大号令。
明くる慶応四年、新選組は「鳥羽伏見の戦い」で新政府軍に敗れたり。
新選組は、その後の戦いでも敗れ、近藤勇は捕縛(ほばく)され、処刑された。