『汚れつちまつた悲しみに……』 中原中也
夕立ちが降った或(あ)る放課後、「耳が痛い」と言う竹一を見ると、
ひどい耳だれで、念入りに耳の掃除をしてやりました。人間、失格。
白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。
子供相手の雑誌だけでなく、駅売りの粗悪で卑狼(ひわい)な雑誌などに
やは肌のあつき血潮(ちしほ)にふれも見でさびしからずや道を説く君
乳ぶさおさへ神秘(しんぴ)のとばりそとけりぬここなる花の紅(くれない)ぞ濃き
春みじかし何に不滅(ふめつ)の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
丁度覗(のぞ)き眼鏡(めがね)を見るように、はっきりと見えるのでございます。
カンダタには蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。
彼奴等(あいつら)如(ごと)きをモミつぶすは、虫ケラより容易(たやす)いことだ。
何時(いつ)までも何時までも人形と紙雛(あね)さまとをあひ手にして
飯事(ままごと)ばかりして居たらば嘸(さぞ)かし嬉しき事ならんを、
何故このやうに年をば取る、最(も)う七月十月(なんつきとつき)、
早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うと
発売日:2009-12-09 歌手:桑田佳祐 作詞:中原中也・高村光太郎・太宰治・与謝野晶子・芥川龍之介・小林多喜二・樋口一葉・石川啄木・夏目漱石・宮沢賢治 作曲:桑田佳祐