誕生-尾崎豊

俺の時計の針がちょうど午前零時を指した

過ぎ去る時は新しい日の中に消え去ってゆく

訳もない涙が溢れ そっとこぼれ落ちる

分からないものが俺の全てを狂わせてしまった

愛を失い 仕事すらなくし 俺は街を出た

そして今俺は一体何を待ち続けているのか

ポケットには別れた家族の写真がある

皆で笑い俺は兄貴に肩を抱かれてる

その写真をながめる度 分けあった訳の中に

それぞれが選んだ生き方を思い浮かべてみる

人生はいつも誰にも冷たいものだから

捨ててしまうことの方がきっと多いものだから

街の風は凍ついたまま吹きつけ心隠さなければ

大切なもの何ひとつ守りきれやしないから

そっと目を閉じて ふっと心を閉ざし 暮らしているけど

Hey baby 俺はクールにこの街で生きてみせる

Hey baby 俺は祈りの言葉なんか忘れちまった

俺はきっとまだ マトモにやれるはずさ

街中の飢えた叫び声に立ち向かいながら

俺は走り続ける 叫び続ける

求め続けるさ 俺の生きる意味を

一人で生きる寂しさに疲れ やがて恋に落ちた

彼女と二人暮らし始めて半年が経った

マトモな仕事が見つからずに 荒れ果てた暮らし

投げ出したくなるそんな暮らしが続く日毎に俺は

愛の温もりも忘れて 心はすさんでゆき

自分自身から逃げ出そうと 脅えて暮らした

心の弱さの逃げ道に罪を犯した俺は

捕えられ 牢獄の重い扉の奥で息をひそめた

そして裁判の後 俺は手首ナイフで切り付け

気がつけば病院のベッドの上薬漬けにされた

あぁ教えてくれ 俺のどこに間違いがあるのか

街の冷たい風から逃れて生きてきただけなのに

やがて俺もマトモな生活を見つめ彼女と暮した

ある日彼女は 涙ぐむ笑顔の中でつぶやいた

二人の新しい命が宿り 生まれてくることを

Hey baby 俺はクールにこの街に生まれた

Hey baby そして何もかも捨てちまって生きてきたんだ

生きる早さに追いたてられ 愛 求め 裏切られ 孤独を知り

振り返ることも出来ず 震え暮らした

そして走り続けた 叫び続けた

求め続けていた 生きる意味も分からぬまま

産声を上げそして立ち上がり

やがて歩き始め 一人きりになる

心が悲しみに 溢れかき乱されても

脅えることはない それが生きる意味なのさ

Hey baby 忘れないで強く生きることの意味を

Hey baby 探している 答えなんかないかもしれない

何ひとつ確かなものなど見つからなくても

心の弱さに負けないように立ち向かうんだ

さぁ走り続けよう 叫び続けよう求め続けよう

この果てしない生きる 輝きを

新しく生まれてくるものよ おまえは間違ってはいない

誰も一人にはなりたくないんだ それが人生だ 分かるか

発売日:1990-11-15

歌手:尾崎豊

作詞:尾崎豊

作曲:尾崎豊