もつと澤山(たくさん)逢いにゐらして下さい…さう口走つた君。 僕は愛ほしく思ひ、大層動じたので、 前髪の成す造形に神経を奪はれて、 鍵(キイ)も持たず家を出たのです。 斯くして、麗しき君の許へ超へていく想ひ、抑へました。 「今日は電車で!」壱度乗り換へた頃、高まつていく時めきに 負けさうになつてゐることに氣付き始めました。 真実は最初で最後なのです…さう口走つた君。 僕は思ひ出しつつ、聡明な生き方を 鳥渡(ちょっと)真似たいと感じ颯爽と歩いては、 キツと厳しい表情(かほ)をしたのです。 君を笑はす為に、微笑むでゐやうと思ひ、鍛へました。 「扉(ドーア)の前にて!」若しも、 此の部屋も無く、連なつてゐる輝きが まやかしであらうとも僕に恐れなどはないです。 君はひと足先に微笑むで、幻視を與(あた)へました。 「こんな僕に!」徐(やを)ら、 見境も無く慾しくなるまぼろしは孰(いづ)れ衰へても 僕には美しく見えます。君だけに是を唄ひます。 発売日:2003-02-23 歌手:椎名林檎 作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎